チタキヨのヨ

妙齢女だらけ演劇ユニット「チタキヨ」の作・演出担当、米内山陽子のあれこれ

鍵の持ち主

10年くらい前、舞台監督と舞台美術をお願いしていた西廣奏さんに言われた言葉が忘れられない。
初めて奏さんとご一緒して、わたしは目の開くような思いをした。
奏さんは、いつもわたしの思いつかなかったような提案をしてくれて、作品のクオリティを上げてくれていた。不思議だった。この人の頭の中には何が詰まっているんだろうと思えた。
当時、若輩ものだったわたしは、恥も外聞もなくものすごく素朴に尋ねた。
「なんでそんなこと思いつくんですか?」

そうしたら彼女は事も無げに言うのだ。
「全部ヨナの中にあることだよ」
「ヨナの知らない、ヨナの抽斗の鍵を開けるのが、わたしの仕事なんだよ」

恐ろしく深く腑に落ちた。
自分もそういう人間でありたいと、強く思った。
そして、自分はいつもそうしてもらっていると、感じられる。

わたしはわたしの抽斗を自力で開けねばならないことも山のようにあるけど、
全部を自力でやっているとは思わない。
そして、誰かの抽斗の鍵を、さっと開けられるようになっていたい。

わたしの仕事の仕方に、強く影響を与えている言葉。

また奏さんと仕事がしたいなぁ。