チタキヨのヨ

妙齢女だらけ演劇ユニット「チタキヨ」の作・演出担当、米内山陽子のあれこれ

神と突破口

自分の中になにか眠っていて、それを解き放てば今直面している問題が解決するような気がする状態のことを
「つぶれる直前のにきび」
と思うことにしています。
書けなくて書けなくて、でも何かの拍子に突破口が見つかって台詞があふれ出てくるような、
そんなものをいつも探している。

ただその突破口は周到な準備と考えの限りを尽くさないと、見つかってはくれません。
作品を作るとき「神が降りてくる」なんてなことがよく言われますが、
神だって、きっちり櫓を組まないと、降りてきてくれない。
土台がぐらぐらの階段を、神は降りてこようとは思わない。
だからわたしは必死に自分に鞭打って、地道な作業でもって櫓を組むわけです。
その櫓も、どんなにきっちり組んだって、ぐっとこなければ降りてきてはくれない。
あー、しんどいよう。

でも、やっぱり、ふと、
あふれ出す瞬間はあります。
その時は、頭の中でファンファーレが鳴り響き、天使はばんばんラッパを吹き鳴らし、鯛やヒラメは舞い踊り、躁状態なのに妙に冷静にキーボードを叩く。
アドレナリンがどばどば出る。
思いも寄らない台詞が出る。

この瞬間のために、仕事をしているんだなと思う。
そんなものをいつも探してる。

神席の力

ここ最近、どうしても自宅で執筆出来なくなっていて、自宅周辺の喫茶店で書いています。
電源があって、長居しても大丈夫っぽい空気があるところ、うるさすぎないところ。
一時期、コワーキングスペースなんかも検討して、ホームページなんかも見てみたんですけど、近所のそういうところは「ウェーイ」感がすごくて怖い。
結局今日も喫茶店の端っこでちくちく文字を連ねているわけです。

いくつかある行きつけの喫茶店のうち、1〜2席、どうあっても筆が進む席があります。
軒じゃないんです。席です。
この店の、この席でないと、というものが存在します。
わたしはそれを神席と呼び、非常に大切にしているのです。

先日、映画監督でありチタキヨのチラシを作ってくれている三ツ橋氏にこのことを話したら
「そこで筆が止まったときの恐怖感すごくない?」
みたいなことを言われて、ハッとしました。
確かにそうだ。
このジンクスが崩れたとき、わたしはいったいどこで書けばいいのや。わからん。怖い。

それからはいっそう神席を大切に扱うようになりました。
多少詰まったくらいでは神席には行きません。
いくつかの、優秀な席をまわり、本当にどうしようもなくなったときだけ、神席に行く。
結果書ける。やっぱ神席すげえ。
いよいよ神席への精神依存がすごくなってきました。
まじ、これで書けなかったらどうするんだ。

というわけで、わたしは今神席にいます。
息子を学童にやり、迫る〆切に怯えながら、神席で執筆しています。
神席よ永遠に。
ただいつか、わたしはここでも書けなくなる。

ああおそろしい。
それでも書くのだ。書かねばならんのだ。

こういう綱渡りが、じつはちょっと気持ちいい。

書けば書くほど遠くなる

文字数だけが順調に数を連ねている。
だけど書きたいことからどんどん遠ざかる病にかかっています。
仕事の話ね。

多分、今までもこういうところを、程度の差こそあれ一度は通って来ているはずなので、
必要なことなんだと冷静に受け止めたい。
受け止めたいけど、受け止められない。

何度か、熱に浮かされたように一気に書いたものが一発OKだったことがあって、わたしは多分それを忘れられないんだと思う。
毎回毎回向いてない、と思って、奥歯すり減らしながら書いて、書いて、書いて、やっぱりこの仕事が好きだと思う。
超どMシステム搭載しちゃってる。

とにかくがんばるしかないので、がんばります。

やったる!

肩慣らし

やっぱりちゃんとブログ書きたいと思って。
設定やタイトルをいろいろいじってみたものの。
早速書くことがない。

息子が毎日「ドラえもん のび太の大魔境」(最近の奴)観ていて、毎日同じ音声を聞きながら家事や仕事をするのは大変に辛いです。
ちょっと前までは「ベイマックス」がそのような状況でした。
毎日観るんだもの。
下手したら一日三回は観るんだもの。

昔からそうだったんですが、毎週毎週子どもに付き合ってアニメ観てると、自分がのび太を嫌いだったことを思い出します。
同族嫌悪的に嫌いでした。
今もちょっとイライラする。
息子はのび太にかなりのシンパシーを抱いていて、だから、それを口に出せずに毎週毎週ドラえもん観ているわけです。

しかし今もって、子ども向けのアニメで「こういう奴は嫌っていい」「こういう奴は馬鹿にしていい」って言う図式はくっきりしてて、げんなりする。
ジャイ子のことを思うと、花沢さんのことを思うと、忍ちゃんのことを思うと、わたしはいつも泣きそうになる。
忍ちゃんを無下に出来ないしんちゃんは、嫌いになれない。
あ、これわたしの僻み意識が出過ぎてないか。
などと自省する。
子ども向けのアニメはわたしの中の色んな意識がざわざわして、全然冷静に見られません。

わたしは何を書こうとしたんだ。

すっかりチタキヨのわたしです

チタキヨが今年も動き出しました。
そしてほぼ同時に上演されるMUにも一部脚本という形で関わらせていただいています。
息子の幼稚園のママさんとやるミュージカルコントの本も脱稿しまして、運動会で息子と踊るダンスの練習もしつつ、別のお仕事も着々と進行中です。
わあ!ありがたいなぁ!忙しいってありがたい!
って本気で思いながら血反吐はいてるよ!ゲロォ!

チタキヨのチラシ、アホで美しくて大変気に入っています。

詳細は★こちら★からどうぞ

 

見送る

「ふりむかないで」無事幕が下りました。
作家として戦うことができたし、舞台手話通訳としても挑戦ができた、楽しい公演でした。
プロデューサーの井上さん、演出の広瀬くん、出演者とスタッフの皆さんに、なによりお客様に感謝。
本当にありがとうございました。


その公演のさなか、大伯母を見送った。
ごく私的なことではあるけれど、ここに書いておきたい。

大伯母は、父方の祖父の長兄の妻だ。
わたしは幼い頃、曾祖母と大伯母夫婦が住む家の離れに、祖父と両親と住んでいた。
母の故郷である広島で生まれて、十歳まで東京のその家で過ごした。
庭を共有していて、大伯父が野焼きをするのをよく見物したし、おかずのやりとりや、電話のやりとり(わたしの家にはしばらく電話はなかった)、何よりとても優しく、暖かく育ててもらった。
祖母のような存在だった。

わたしの両親は耳が聞こえない。
そして、その両親、つまり父方、母方の両祖父母も耳が聞こえない。
両親は子どもを作ることを反対されていたそうだ。
また、耳の聞こえない子が生まれたら……
そういう考えが普通の時代だったんだと思う。
母は誰にも黙ってわたしを身籠もった。
安定期に入ると母子手帳が送られてくる。
それで、わたしを妊娠していることが知れた。
それから出産までの半年近くを、どう過ごしていたのかはわからない。
諦めに近い感覚で、見守ってもらっていたのかもしれない。
やがてわたしは生まれた。
耳に聞こえる子どもとして。
驚きと喜びでわたしは東京の家に迎えられた。
陽子と名付けられた。
わたしはよく喋り、よく笑う子どもだった。
曾祖母は毎日のように離れに来てわたしをかまい、大伯父も大伯母も孫のように接してくれた。
母方の祖父母は広島だったし、父方の祖母はわたしが生まれる前に鬼籍に入り、祖父は病に伏せていたので、わたしにとって、身近に接する大人は両親と曾祖母、大伯父大伯母だった。

大伯母の家でおねしょをしたことがある。
もう十歳になろうかという時だった。
恥ずかしさと焦りで縮こまるわたしの布団を、誰にも何も言わずばれないように干してくれたのは大伯母だった。
敬老の日に大伯父と大伯母にプレゼントをしたら、涙ぐんでいた。
大伯母の作る卯の花の味。
大伯母は穏やかな人で、声を荒げることをしなかった。
悪いことをしたときは、穏やかに窘められた。
大伯母のわたしを呼ぶ声。
台所での大伯母の振るまい。
何気なく積み重なっていく日常に、大伯母はいた。
やがてわたしは十歳になり、広島に越した。
それから大伯母とは暮らしていない。
もっと会いに行けば良かった。
もっと優しくすれば良かった。

月並みな言い方だ。
だけど、本当に優しくしてもらった。
大好きだった。
本当に寂しい。

「ふりむかないで」(手話通訳公演追記あり)

えっ、前回記事去年の六月……?
ご無沙汰しています。米内山です。
思えば去年の夏からこっち、仕事の海で溺れそうになりながら必死に泳ぎ切り、
年開けて、ようやく落ち着いた、の、よね? わたし?
自分でも自分の状況をよく把握できていなくて泣きそうです。

あ、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

お知らせです。

エビス駅前バーでの久しぶりの完全新作です。
昨年の八月にもオリジナルやっとるんですが、あれは急遽共著だったしね……
あの時期の記憶、あんまないや……
いいんだそんなことは。

そう、完全新作です。
そして挑戦作です。

エビスをご覧になっているお客様におかれましては、
米内山脚本のエビス、マンネリ……飽きた……
みたいな思いもないこたないと思うのです。
「またこういうテイストね」みたいなやつ。
それを! 完全に! 払拭します!

キャストも豪華な方が揃い、
演出は何度タッグを組んだか数えるのもめんどくさい広瀬格さん。
わたしと広瀬さんがエビスで新作やるなら、もう次は大挑戦するしかない。
漲って書きました。

日程は後日発表になりますが、手話通訳も付きますよ!
※日程発表しました! 
10日(土)18:00の回が手話通訳つきます!

0距離での、今までなかった大人のエビス。
是非目撃してください。




エビス駅前バープロデュース
「ふりむかないで」

僕は妻を愛しています。
それは嘘じゃない。
一人の男が七人の女を旅する、ロードムービー

脚本:米内山陽子(トリコ劇場/チタキヨ)
演出:広瀬格(smokers/DART'S)

出演
金崎敬江(miel)
斉藤麻衣
田中千佳子(チタキヨ)
菊池美里
根本沙織

酒井香奈子

岸本卓也


@エビス駅前バー
恵比寿駅より徒歩3分


【タイムテーブル】

5月1日(木)21:00
5月2日(金)18:00/21:00
5月3日(土)12:00/15:30/18:00
5月4日(日)12:00/15:30/18:00
5月5日(月)!!休演日!!
5月6日(火・祝)12:00/15:30/18:00
5月7日(水)18:00/21:00
5月8日(木)19:00/21:00
5月9日(金)18:00/21:00
5月10日(土)12:00/15:30/18:00(手話通訳付き)
5月11日(日)12:00/15:30/18:00
5月12日(月)19:00/21:00
5月13日(火)19:00/21:00
5月14日(水)18:00/21:00

※受付・開場は開演の30分前です。



【チケット】
3,600円+1ドリンク

割引あります※併用不可
・夫婦割…男女二名様以上の予約でお一人様につき400円引き
・ふりむかない割…受付にて「前向きです」と言うだけでどなたでも400円引き 

【ご予約はこちらから】
http://ticket.corich.jp/apply/54540/yok/